Safety
ホンジュラスの治安
Safety
ホンジュラスの治安
彼の持つ「マチェーテ(長いナタのような刃物)」は農作業用の道具であり、農村では多くの人が日常的に携帯しています。危険な意図があるわけではありません。
残念ながら、ホンジュラスの治安は決して良いとは言えません。世界でも危険度の高い国としてたびたび取り上げられ、World Population Review によれば、2025 年の犯罪指数は 73.4。これは 世界で6番目に高い犯罪指数 にあたります。
とはいえ、実際にこの地に住んでみると、単純に「治安の悪い国」とひと括りにするには違和感があります。ホンジュラスの人々は本当に優しく、穏やかで、人懐っこい方が多い国です。重要なのは、危険が報告されているエリアや状況をしっかり理解し、適切な行動を取ることだと実感しています。
「旅」は安全が確保されてこそ、心から楽しめるものです。このページでは、ホンジュラスがなぜ「治安の悪い国」と評価されているのかという背景を説明しつつ、実際にどのような点に気をつければよいのかを紹介します。また、筆者が日々の生活の中で感じている視点も交えながら、安全面についてできるだけ分かりやすくお伝えしていきます。
なお本記事は、あくまでも筆者個人の視点によるものとしてお読みいただければ幸いです。
(2026年1月執筆)
渡航や滞在の際は、
必ず在ホンジュラス日本国大使館および外務省「海外安全ホームページ」などの公式情報を確認し、
最新の安全情報を入手するようにしてください。
あわせて、外務省の海外旅行登録サービス「たびレジ」への登録もおすすめします。現地の安全情報や緊急連絡を受け取ることができ、万一の際の備えになります。
そもそも、なぜホンジュラスが治安の悪い国とされているのでしょうか。私はこの国では、大きく分けて四つの観点から、犯罪が起きやすい状況にあると感じています。
1. 蔓延するギャングによる犯罪
2. 麻薬の重要な密輸ルート
3. 貧困国ゆえの生活困窮者による犯罪
4. 治安維持機能の脆弱さ
これら四つが、治安悪化の大きな要因として挙げられます。もちろん、これらをさらに細かく分類して分析することも可能ですが、ここではそれぞれの項目について、できるだけ分かりやすく、大枠をとらえる形で解説していきます。
治安状況は日々変化します。また、国内情勢だけでなく近隣諸国の政策や世界情勢によっても大きく影響を受けます。そのため、本記事はあくまで参考としてお読みいただき、実際に渡航される際は最新の安全情報を必ず確認してください。
右のテグシガルパと左のコマヤグエラを隔てるグアセリケ川。
コマヤグエラ地区は治安の問題から、地元民も出入りを控えています。
まず初めに、ギャング(マラス・Maras)による犯罪について触れておきます。
ホンジュラス国内では「マラ・サルバトゥルチャ(MS-13)」 と 「パンディージャ18もしくはバリオ18(Barrio 18)」が二大勢力として広く知られており、長年にわたって治安悪化の主要な要因となってきました。これらのギャングは主に 大都市の貧困地域を拠点として活動しており、テグシガルパ、サン・ペドロ・スーラ、ラ・セイバ などが特に影響の大きい地域として挙げられます。とりわけサン・ペドロ・スーラは、現在こそ抗争が減少傾向にあるものの、過去には「世界で最も危険な都市」と称された時期もあり、長くギャング問題に悩まされてきました。
ギャングの主な犯罪としては、殺人、強盗、麻薬取引、みかじめ料の徴収 が挙げられます。特にみかじめ料に関しては、支払いを拒むバス会社が襲撃される事件が起きることもあり、公共交通の安全性 にも影響を及ぼしています。
このような背景から、テグシガルパ、サン・ペドロ・スーラ、ラ・セイバ といった大都市では、徒歩移動を避け、信頼できるタクシーやUberなどを利用したドア to ドアの移動が必須となります。
首都のコマヤグエラ地区。多くのバス会社はこの地区から出発するため、入る際は細心の注意が必要。
この国の治安を語るうえで、切っても切り離せないのが 「麻薬」 の存在です。地理的に、南米で生産された麻薬が北米へ運ばれる際、その中継地となるのが中米であり、ホンジュラスも主要な通過ルートになっています。特に東部の グラシアス・ア・ディオス県 や オランチョ県 などから、陸・海・空のあらゆる手段で麻薬が持ち込まれています。
ここで関わってくるのが、先述のギャングとは別の 「麻薬カルテル」 と呼ばれる大規模組織です。彼らは国境を越えてコカインの取引を行い、ギャング(MS-13やパンディージャ18)はその供給網の末端として国内流通を担うことが多いとされています。
実際の街中でも、麻薬を使用した直後と思われる人が歩いていたり、レストランやパーティー会場の片隅で使用している場面を目にすることもあります。地方でも一定の広がりを感じますし、特に観光客の多い バイア諸島県(特にウティラ島)では、薬物の存在をより身近に感じることがありました。日本と比べると、薬物との距離がかなり近い国であると感じます。
麻薬の販売者や使用者の背後には、ギャングが関わっている可能性があるとも考えられます。そのため、こうした場面を見かけても「近づかない」「刺激しない」 ことが重要です。もし遭遇した場合は、静かに距離を取り、その場から立ち去ることが最も安全です。
注:写真はイメージです。
イベントのために冷凍したお米300人前を首都から運んだ時の写真です。
まず初めにお伝えしたいのは、ここで述べる内容は現在のホンジュラス政府や体制を批判する意図ではないということです。
ホンジュラスはもともとインフラ整備が十分とは言えず、未舗装の道路が多く、電波が届かない地域もあります。また、町や地域によっては警察の常駐がないこともあります。そのため、もし事件やトラブルが起きた際、警察が現場に到着するまでに時間を要してしまうことがあります。
また、買収や賄賂が身近に存在しているのも否定できません。詳しい事情は分かりませんが、筆者の知人によると、交通違反をしてもその場で警察官にお金を渡すことで見逃されることがあるそうです。もちろんこれがすべてではありませんが、こうした慣習が一部で根付いていることは確かだと感じています。麻薬関連の警察・政治の汚職も度々問題視されています。
一方で、近年ホンジュラスでは観光地の警備が強化されています。コパン遺跡で知られるコパン・ルイナス市では取り締まりが厳格に行われており、観光客が安心して滞在できる体制が整いつつあります。またロアタン島では、市警が数多く配置され、特にバケーションシーズンには昼夜問わず治安維持のために巡回が行われています。
移動型ディスコ。会場が盛り上がりすぎたりすると、
監視している警官が催涙ガスを使うこともあるそうです。
ギャングや麻薬カルテルの存在に加えて、貧困層による犯罪もホンジュラスの治安を悪化させる大きな要因となっています。スリや置き引きといった軽犯罪に加え、ひったくり、恐喝、強盗など、身の危険が及ぶケースもあります。
ホンジュラスでは、町のセントロ(中央地区)であっても郊外であっても、どこでも一定の注意が必要です。中心部は人通りが多い分スリなどが起きやすく、郊外は暗い道や交通量の少なさから夜間の犯罪リスクが高まります。そのため、場所そのものよりも、時間帯や周囲の環境を見ながら行動することが重要です。市場やバスターミナルなど人が集まる場所では、特に貴重品の管理に気をつける必要があります。
ギャングが大都市周辺に集中しているのに対し、貧困層による犯罪は全国どこでも起こりうる点は覚えておきたい部分です。しかし地域差は大きく、すべての地方都市や観光地で常に横行しているわけではありません。地方の町では特に大きな犯罪は少なく、然るべき対策をしておくことで、安心して旅ができる環境が整っています。
とある町の市場周辺。
なおこの市場は犯罪多発地域ではありません。
ホンジュラスでは、地域のローカルニュースを主に Facebook を通じて共有している人や機関が多く存在します。発信内容の中には真偽が不鮮明なものもありますが、現地住民にとっては重要な情報源となっています。例えば、どこで強盗が起きたのか、どの道が崩れて通行止めになっているのか、事件の背景、政党の集会予定など、生活に直結する情報が日々更新されています。
こうした投稿は、Facebookの検索欄に地域名を入力するだけで比較的簡単に見つけることができるため、最新の動向を知る手段として活用する価値があります。 渡航前や滞在中に確認しておくことで、安全対策にも役立つでしょう。
筆者は大都市ではなく地方都市に暮らしていますが、それでも日本より遥かに殺人や強盗が身近であると感じる場面がありました。特に地方都市の殺人に関しては、金銭目的というよりも、個人的な恨みや感情のもつれに端を発するものが多い印象があります。大都市では状況も異なるかもしれませんが、必ずしも犯罪のすべてが金銭目的やギャング関連とは限らないという点は認識しておく必要があります。
グラシアス市の中心地。
どの町でも人と車との距離が近く、交通事故が多いのも危険な点です。
ホンジュラスで安全に旅をし、楽しく過ごすために注意しておきたいことは以下の通りです。
大都市(テグシガルパ、サン・ペドロ・スーラ、ラ・セイバ)では徒歩移動を避け、信頼できるタクシーや Uber を利用する。乗り物に乗る際も、施錠をし、窓も閉めるようにする。
みかじめ料の問題から、大都市周辺の周遊バスには乗らず、都市間の移動も信頼できる会社の大型バスを利用する。
夕方~夜にかけてはバス強盗が増えるため、バス利用は日中に限定し、早めに移動を終える。
所持金は必要最低限にし、強盗対策として「捨て金」を500レンピーラ程度ポケットに入れ、残りは分散する。目立つ服装や高価に見える装飾品は避ける。
日没後に外出する場合は複数人で行動し、夜遅くの外出は控える。
バー、ディスコ、クラブ、パーティーでは、アルコールや薬物に絡むトラブルに注意する。
ホテルスタッフや地元タクシーの運転手から、その町の危険地域や最新の治安情報を聞いておく。
政治、宗教、サッカーの話題は口論や揉め事の原因となるので、なるべくしないようにする。
路上でのスマートフォンの使用は避け、必要なときは建物の中や安全な場所で行う。
ATM はスーパーマーケットやショッピングモールなど、人目があり安全な場所のものを利用する方がより安全。
細かいことを挙げればきりがありませんが、今回は特に重要と感じる10項目を取り上げました。もちろん、これらを守っているからといって絶対に安全が保障されるわけではなく、ときには避けようのないトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあります。それでも事前にホンジュラスの犯罪傾向を知り、心の準備をしておくことで、いざという場面で冷静に判断できる助けになるはずです。また、不必要な恐怖を抱かずに旅を楽しむための心の余裕にもつながるでしょう。
普段の生活の中で関わるホンジュラス人は、本当に温かく、人懐っこく、犯罪とは無縁に思える人ばかりです。むしろ、統計を押し上げているのはごく一部の人々であると感じざるを得ません。だからこそ、素晴らしい人々が暮らすこの国を、「怖がり過ぎず、しかし油断しすぎない」、そんな程よい距離感で楽しんでほしいと願っています。