04.コパン県
ホンジュラス西部にある「コパン県」の概要、名前の由来、人口、代表的な観光地をご紹介します。
コパン県(Copán)はホンジュラス西部に位置し、東はサンタ・バルバラ県およびレンピーラ県、西はグアテマラ、南はオコテペケ県と接しています。総面積は約3,200㎢で、日本の埼玉県より小さい規模です。県は23の市から構成され、県都はサンタ・ロサ・デ・コパン市(Santa Rosa de Copán)です。
コパン県には国内を代表する観光地、世界遺産「コパン遺跡(Ruinas de Copán)」があり、国内外から多くの観光客が訪れます。コパン遺跡に限らず、県の中央から西部にかけては、マヤ王朝の影響を受けた遺跡が点在しており、現在でも発掘・調査が続けられています。
一方、県都のサンタ・ロサ・デ・コパン市は、コロニアル様式の街並みが残る美しい都市であり、ホンジュラス西部におけるビジネスの中心地としても発展しています。また、国内有数の葉巻の生産地としても知られ、大切な産業の一つです。周辺住民からは買い物や食事を楽しむ町として親しまれています。
コパン県は、かつて「ウエイトラト(Hueytlato)」や「パヤキ(Payaqui)」と呼ばれる都市であったとされています。
「コパン(Copán)」という名前は、ナワトル語に由来するといわれています。ナワトル語はアステカ文明の時代から使われてきた言語で、現在もメキシコやグアテマラの一部地域で話されています。ホンジュラスではすでに使われていませんが、国内の多くの地名にはナワトル語に由来するものが残っています。
「コパン」という言葉は、ナワトル語の「クアンパントリ(Quanhpantli)」に由来し、「木の橋」という意味があります。これは、コパン遺跡周辺が谷地であり、多くの木の橋が架けられていたことに由来するという説が伝えられています。
その後、「クアンパントリ」は「コパンテ(Copante)」へと変化し、やがて現在の「コパン(Copán)」という名称として定着しました。
コパン遺跡の祭壇Q(Copán Ruinas, Copán Ruinas)
コパン遺跡とマヤ彫刻博物館
(Copán Ruinas y Museo de Escultura Maya, Copán Ruinas)
コパン遺跡は、ホンジュラスを代表する観光地のひとつです。ユネスコ世界遺産にも登録されており、紀元前1400年頃から人が暮らしていたとされます。西暦435年から822年頃までの約400年間にわたり、16代の王がこの地を治めました。
コパンの建造物には、他のマヤ遺跡とは異なり、柔らかい凝灰岩が多く使われています。この石は彫刻しやすく、王や神々の姿、動物や植物などが細やかに刻まれています。その繊細な表現が、コパンを「アメリカ大陸のアテネ」と呼ばれるほどの美しさへと導きました。また「階段状の碑文(Escalinata de los Jeroglíficos)」には約1800の象形文字が刻まれ、王の功績や出来事が今も静かに語られています。
遺跡のそばには「マヤ彫刻博物館(Museo de Escultura Maya)」があり、出土した彫像や装飾品を見ることができます。中でも、かつて神聖視された「ロサリラ神殿(Templo Rosalila)」の実物大の再現展示は、当時の色彩や構造を感じられる見どころです。
発掘調査には日本の大学やJICAが深く関わっており、ホンジュラスと日本の協力の歴史を感じられる点もこの遺跡の特徴です。
コパン・ルイナス市街
(Copán Ruinas, Copán)
コパン遺跡のあるコパン・ルイナス市は
小さくかわいらしい街に、多くの店が軒を連ねています。
アベス公園
(Parque de Aves, Copán Ruinas)
コパン・ルイナス市にある鳥類の保護公園。
国内に生息する様々な鳥類を見ることができます。
マヤ考古学博物館
(Museo de Arqueología Maya, Copán Ruinas)
中央公園の近くにある博物館。
立入りできない遺跡内部探索ができるVRもあります。
ルナ・ハグアル温泉
(Luna Jaguar Hot Springs & Spa, Copán Ruinas)
市の郊外にある国内最大級の温泉。
マヤ文明をテーマとした天然温泉が楽しめます。
コパン・ルイナス市がマヤ文明時代の都市として知られているのに対し、県都であるサンタ・ロサ・デ・コパン市は、スペイン統治時代に発展したコロニアル都市として知られています。碁盤の目状に整備された町並みには、当時の面影を残す建物や歴史的建造物が数多く残っており、同じ県内にありながら、異なる時代のホンジュラスの歴史を体感することができます。
またサンタ・ロサは、ホンジュラス国内二大葉巻産地の一つとしても知られています。1700年代には、周辺地域で生産されるタバコがスペイン王室から高い評価を受け、その葉巻づくりの技術と職人文化は現在まで脈々と受け継がれています。
市内では歴史スポット巡りに加え、多彩なレストランやカフェを楽しむことができます。さらに、自転車型ジップライン「Bici Canopy La Hondura」といったユニークなアクティビティもあり、文化・食・体験を組み合わせた観光が楽しめることから、国内でも人気の高い観光地の一つとなっています。また、毎年4月から5月にかけて行われる「エクスポコパン(ExpoCopán)」では、大規模なカーニバルや多彩な催し物が開催され、街全体が一年で最も活気づく時期となります。
サンタ・ロサ大聖堂と中央公園
(Catedral de Santa Rosa, Parque Central )
1800年頃に建築された大聖堂。
隣接する中央公園は地域住民の憩いの場となっています。
エル・セリート
(El Cerrito, Santa Rosa de Copán)
サンタ・ロサ市設立100年を記念して建てられた記念碑。
巨大な聖書にはカトリック系の十戒が書かれています。
自転車型ジップライン
(Bici Canopy La Hondura, Santa Rosa de Copán)
自転車を漕ぎながら進むジップライン。
それなりに高さがあり、とってもスリリング!
エル・プエンテ遺跡は、ヌエバ・アルカディア市(Nueva Arcadia)のラ・エントラーダ地区(La Entrada)に位置する、マヤ時代の遺跡です。紀元600〜900年頃、マヤ文明のクラシコ期(古典期)に築かれ、中枢都市を支える衛星都市のような役割を果たしていたと考えられています。
遺跡自体は比較的小規模ながら保存状態が非常に良く、敷地内には複数のピラミッド型建造物を間近に見ることができます。併設された博物館では、この遺跡から出土した土器や偶像などが展示されており、当時の人々の暮らしや信仰を具体的に感じ取ることができます。
国内でも知名度はまだ高くなく、訪れる人は多くありません。そのため遺跡全体は静けさに包まれており、まるで太古の時代から時間が止まったまま残されているかのような、不思議な感覚を味わうことができます。まさに隠れた遺跡スポットです。
なお、この遺跡の本格的な発掘調査には、1980年代に派遣された約10名のJICAボランティアが深く関わっており、博物館内の展示には現在も日本語による解説が所々に残されています。
コパン県は現在、ホンジュラス国内でも比較的治安が落ち着いている地域とされています(2026年1月現在)。特に、国内で最も重要な観光地の一つであるコパン・ルイナス 市では、国を挙げた治安維持体制が取られており、観光客が安心して滞在できる環境づくりが進められています。
ホンジュラス全体の殺人率が非常に高かった2011年には、コパン県内でも過去最多となる殺人事件が発生しました。その影響もあり、日本の外務省は長らく注意喚起を行っていましたが、近年の治安改善を受け、比較的最近になって渡航危険レベルはレベル2からレベル1へと引き下げられています。
ただし、県内すべての地域が同様に安全というわけではありません。例えば、ラ・エントラーダ(ヌエバ・アルカディア市)は、地元住民の間でも治安面を懸念する声が聞かれる地域です。エントラーダは、コパンルイナス市、サンペドロスーラ 市、サンタローサ市へ分岐する交通の要所であり、多くの人や都市間バスが行き交います。そのため、国内ではあまり見られないほど激しいバス会社同士の客引きが行われることもあり、時には服や荷物を掴んで自社のバスに乗せようとする場面に遭遇することもあります。特別な用事がない限りはエントラーダで下車せず、直行便のバスを利用するなどの対策を取ることが望ましいでしょう。
コパンルイナス市。夜間でも比較的人通りがあり、警察も点在しています。